男性から女性へ性別移行を行うMtF(Male to Female)のトランスジェンダーの人々がホルモン療法を開始すると体つきや肌質が変わるだけでなく髪の毛にも顕著な変化が現れることは医学的に広く知られています。これまでAGAによる薄毛に悩んでいた人でも女性ホルモンの投与と男性ホルモン遮断薬の併用によって生え際から産毛が生えてきたり頭頂部の透けが改善したり髪一本一本が太くしなやかになったりするケースは枚挙に暇がありません。これは女性ホルモンがいかに強力な育毛作用を持っているかそして男性ホルモン(特にDHT)がいかに髪の成長を阻害しているかを証明する生きた実例と言えます。彼女たちの髪の変化を見ていると「自分もホルモンを使えば髪が生えるのではないか」と羨ましく思う男性がいるのも無理はありません。しかしここで忘れてはならないのは彼女たちが手に入れた美しい髪は男性としての機能や身体的特徴を捨てるという大きな決断と引き換えに得られたものだという事実です。彼女たちは髪を増やすためにホルモンを打っているのではなく女性として生きるためにホルモンを打ちその副産物として髪質の変化を得ているに過ぎません。そしてその過程では性欲の消失や生殖能力の喪失情緒の不安定さ血栓症のリスクなど一般男性が安易に許容できる範囲を遥かに超えた副作用と向き合い続けています。この事実は私たちに二つの教訓を与えてくれます。一つは薄毛の原因が間違いなくホルモンバランスにあるという科学的な確証。もう一つは髪を得るためにホルモンを操作することはアイデンティティそのものを書き換えるほどの重大な行為であるという警告です。シスジェンダーの男性が髪のためだけにこの領域に足を踏み入れるのはあまりにもリスクとリターンのバランスが崩れています。彼女たちの変化は医学的な事実として参考にしつつ自分は男性の体を維持したまま行えるAGA治療を選択するのが賢明な判断と言えるでしょう。