薄毛の悩みがあまりにも深く髪が生えるなら何を犠牲にしても構わないと思い詰めてしまう男性の中にはインターネットの個人輸入代行サイトなどを通じてピルや更年期障害治療薬などの女性ホルモン剤を入手し服用しようとする人がいます。しかしこの行為は自分の体を実験台にするような非常に危険な賭けでありその代償として現れる身体の女性化という副作用は想像を絶するものがあります。まず最も顕著に現れるのが女性化乳房と呼ばれる現象です。乳腺が発達し胸が膨らみ始め乳首が敏感になったり痛みを感じたりするようになります。一度発達してしまった乳腺組織は薬をやめても自然には元に戻らないことが多く手術で切除しなければならないケースもあります。次に性機能への壊滅的な影響です。リビドーすなわち性欲が著しく減退し勃起不全EDを引き起こします。精巣が萎縮し精子の製造能力が低下あるいは停止するため男性不妊の原因となり将来子供を望むことができなくなる可能性が極めて高くなります。さらに筋肉量が減少し脂肪がつきやすくなるため体つきが丸くなりヒゲや体毛が薄くなる一方で肌の質感が柔らかくなるといった変化も現れます。これらはトランスジェンダーの人が望んで行う変化ですが髪を増やしたいだけのシスジェンダーの男性にとってはアイデンティティを揺るがす深刻な苦痛となり得ます。また精神面への影響も見逃せません。ホルモンバランスの急激な変動は脳に影響を与え情緒不安定や抑うつ状態イライラなどを引き起こし日常生活や社会生活に支障をきたすこともあります。血栓症のリスクも高まり最悪の場合は命に関わる事態にもなりかねません。髪の毛一本のために失うものが男性としての機能や健康そして精神の安定であるならばそのトレードオフはあまりにも割に合わないものです。安易な気持ちで禁断の果実に手を出す前にその不可逆的なリスクについて今一度冷静に考える必要があります。歴史を紐解くと男性ホルモンと薄毛の関係を証明する興味深くも残酷な事実に行き着きます。それは古代中国の宦官や中世ヨーロッパのカストラートといった思春期前に去勢された男性たちは決してハゲることがなかったという記録です。去勢によって精巣を失うとテストステロンの供給源が断たれるため薄毛の原因物質であるDHTが生成されずAGAを発症することがないのです。これは1940年代にハミルトン医師によって行われた研究でも確認されており男性ホルモンが薄毛の主犯格であることを決定づける根拠となりました。しかし現代を生きる私たちが髪のために去勢をするということはあり得ません。それは男性としての人生の多くを放棄することを意味するからです。この歴史的な事実は私たちに何を教えてくれるのでしょうか。それは「薄毛は男性ホルモンの存在証明である」というある種の諦めと慰めそして「ホルモンさえコントロールできれば薄毛は防げる」という希望です。現代医学は去勢という極端な方法をとらなくても薬一粒でDHTの生成だけを抑制できるレベルまで進歩しました。
男性が女性ホルモン剤を使用した場合に起こる身体の女性化