毎日可愛らしく髪を結んでいる女の子。しかし、その愛情のこもったヘアアレンジが、知らず知らずのうちに薄毛の原因になっているとしたら、それはとても悲しいことです。小学生の女の子の薄毛の原因として、意外と多いのが「牽引性(けんいんせい)脱毛症」です。これは、特定の髪型によって、髪の毛が常に同じ方向に強く引っ張られ続けることで、毛根に物理的なダメージが蓄積し、その部分の髪が抜けたり、細くなったり、生えてこなくなったりする状態を指します。牽引性脱毛症が起こりやすいのは、いつも同じ分け目で髪を結んでいたり、ポニーテールやお団子ヘア、きつい三つ編みや編み込み(コーンロウなど)といった、髪を強く引っ張る髪型を長時間、長期間続けている場合です。特に、バレエやダンス、新体操などを習っているお子さんは、発表会などのために髪をきつく結ぶ機会が多く、注意が必要です。症状が現れやすいのは、生え際やおでこの剃り込み部分、分け目の部分など、最もテンションがかかる場所です。最初は、その部分の髪が細くなったり、切れ毛が増えたりすることから始まります。その状態が続くと、徐々に地肌が透けて見えるようになり、産毛さえも生えてこない状態になってしまうこともあります。牽- 引性脱毛症の良い点は、原因がはっきりしているため、対策も明確であることです。最も効果的な対策は、原因となっている髪型をやめることです。髪を結ぶ位置を毎日変えたり、シュシュなどの柔らかい素材のヘアアクセサリーを使ったりして、毛根への負担を減らしてあげましょう。可能であれば、家にいる時や寝る時は髪をほどき、頭皮を休ませてあげる時間を作ることも大切です。もし、すでにある程度薄毛が進行してしまっている場合は、皮膚科に相談することをお勧めします。多くの場合、原因となる牽引をやめれば、数ヶ月から一年程度で毛根の機能は回復し、再び髪が生えてきます。しかし、長期間にわたって強い牽引が続くと、毛根そのものが完全に傷んでしまい、永久に髪が生えてこなくなる可能性もゼロではありません。お子さんの健やかな髪を守るためにも、日々のヘアスタイルに少しだけ注意を払い、頭皮からの小さなSOSサインを見逃さないようにしてあげてください。