私たちは、薄毛の原因を考える時、ついホルモンや遺伝といった、体の内側の要因にばかり目を向けがちです。しかし、髪が育つための「土壌」である「頭皮」の環境が劣悪であれば、どんなに良い種(毛根)があっても、健康な髪(作物)は育ちません。頭皮環境の悪化は、AGAなどの進行を加速させるだけでなく、それ自体が薄毛の直接的な原因にもなり得る、見過ごせない問題なのです。頭皮環境を悪化させる最大の要因の一つが、皮脂の分泌異常です。皮脂は、頭皮を乾燥や外部の刺激から守るための天然のバリア機能を持っていますが、その分泌が過剰になると、問題を引き起こします。過剰な皮脂は、空気中のホコリや汚れと混じり合って毛穴を詰まらせ、髪の健やかな成長を妨げます。また、この皮脂を餌として、頭皮の常在菌であるマラセチア菌が異常繁殖すると、その代謝物が頭皮を刺激し、炎症を引き起こします。これが、強いかゆみやベタついたフケを伴う「脂漏性皮膚炎」です。炎症を起こした頭皮は、いわば火事場のようになった状態。そんな場所では、毛根も正常な活動ができず、抜け毛が増加する「脂漏性脱毛症」へと繋がってしまいます。逆に、皮脂の分泌が少なすぎると、頭皮は乾燥し、バリア機能が低下します。乾燥した頭皮は、外部からの刺激に非常に敏感になり、僅かな刺激でも炎症やかゆみを引き起こしやすくなります。また、乾燥によって角質が剥がれやすくなり、パラパラとした乾いたフケの原因にもなります。これらの頭皮トラブルは、間違ったヘアケアによって引き起こされることも少なくありません。洗浄力の強すぎるシャンプーで皮脂を取りすぎたり、逆に洗い方が不十分ですすぎ残しがあったり、あるいは整髪料が毛穴に詰まったりすることも、頭皮環境を悪化させる原因です。頭皮のかゆみ、フケの増加、赤み、できもの。これらは、あなたの頭皮が発している危険信号、SOSサインです。このサインを放置せず、シャンプーを見直したり、皮膚科を受診したりして、まずは髪が育つ土壌を健康な状態に戻してあげること。それが、あらゆる薄毛対策の基本中の基本と言えるでしょう。